
プラスチック・チャイナ
8月2日(SAT) / 17:30
2016年製作/中国/作品時間82分
世界中から輸入したプラスチックのゴミをリサイクルする中国の小さな家族経営の町工場の日々。そこで働く父親と暮らす少女イージエは、幼い妹や弟の世話をしながら、プラスチックリサイクル工場の仕事を手伝って暮らしている。イージエは学校へ行く夢を抱いているが、飲んだくれの父親は、許してくれない。学校へ通わせる金はないという。仕方なく、ゴミ山から見つけてきた雑誌や広告を教科書代わりに、言葉を学ぼうとするイージエ。一方、雇い主のクンは、農村出身で、生きていくためにできることは工場を必死で営むしかないと嘆く。一人息子をようやく学校へ通わせることができたが、今度は衝動的に買った車で莫大なローンを背負うことになった。いつまで学校へ通わせることができるのか…。黒煙を上げ、野焼きされる廃棄物。有害物質が漂うゴミ山で教育を受けられない子どもたちは1日中遊んでいる。経済発展を遂げた中国社会の貧困層の暮らしをみつめる衝撃的なドキュメンタリー作品。
監督:ワン・チウリャン
音楽:タイラー・ストリックランド
製作:CNEX
<作品の見どころ・社会問題提起>
◆プラスチック・ゴミを輸出し廃棄物処理を中国の貧困層に依存していた日本◆
中国政府は、プラスチック・ゴミの世界的な輸入大国でしたが、2017年末それらの輸入を禁止しました。このドキュメンタリー映画が中国社会に与えた影響によると言われています。それによって、日本国内で廃棄されたプラスチック・ゴミの保管量が増加するなど、日本にも影響を与えています。つまり、日本は自国の廃棄物の処理を中国の貧困層に依存していたことになります。さらに、そこで働く人々の健康をも蝕んでいます。こうした現実は、日本国内でもあまり知られていません。早急に使い捨てプラスチックの段階的廃止を打ち出したフランスや台湾に比べ、日本は無策と批判されても仕方がない状況です。アジアの未来を考える時、国内だけに目を向けていては、根本的な問題解決にはなりません。社会問題は、国、地方、企業、家族、そしてひとり一人の人間の小さな心がけや思いやり、気づかいが社会を変えていく力になるのです。世界中の廃棄物の発生と輸出が他国に影響を与える環境問題ー。その処理に追われる輸入先の劣悪なリサイクル工場で、貧困層の家族や児童労働に近い形で働く子どもたち。自国の環境対策やゴミ処理が他国の貧困や子どもたちの教育格差の発生につながっていることを深く考えさせられます。
(映画賞/映画祭)
2016年 IDFA特別審査員賞
2017年 サンダンス映画祭 公式セレクション
2017年 ONE WORLD 国際人権ドキュメンタリー映画祭 最優秀監督賞
2017年 ミレニアム 国際ドキュメンタリー映画祭 持続可能な開発に関する最優秀映画
2017年 フル フレーム ドキュメンタリー映画祭 環境賞
2017年 台北金馬映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞・最優秀編集賞
2017年 ロサンゼルス・アジア太平洋映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
予告編
登壇者紹介

滝沢 秀一
お笑いコンビ「マシンガンズ」・ごみ清掃員
お笑いコンビ「マシンガンズ」を結成し、M-1グランプリ準決勝進出(2007・2008年)や「THE MANZAI」認定漫才師(2012・2014年)、2023年「THE SECOND~漫才トーナメント~」準優勝など、テレビや舞台で活躍。
一方で、定収入を得るためごみ収集会社に就職し、ごみ清掃員としても活動を開始。現場での経験から、格差社会やごみ問題、清掃員の日常をSNSやエッセイで発信し大きな反響を集める。著書『このごみは収集できません』『ごみ清掃員の日常』などを通じ、ごみの分別や食品ロス、サステナビリティについて分かりやすく伝え、社会問題への関心を広げている。
2020年には環境省「サステナビリティ広報大使」に任命され、全世代向けのSDGsイベントや講演会を精力的に実施。芸人としての視点と清掃員としての現場感覚を活かし、“ごみ学”の発信を続けている。

伴野 智
株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、ギャラクシー賞などの受賞実績がある。