
遠い愛を求めて タイの花嫁たち
8月3日(SUN) / 13:00
【日本初公開作品】
原題:Heartbound: A Different Kind of Love Story
2018年製作/作品時間91分
撮影地:デンマーク、タイ
製作国:デンマーク、オランダ、スウェーデン
欧州・デンマークのユトランド半島にある小さな漁村に、多くのタイ人女性が移り住んでいます。貧しいタイの女性たちが、漁村で暮らす孤独な男性のもとに嫁いでいるのです。はじまりは、タイの歓楽地パタヤでセックス・ワーカーとして働くタイ人女性と地方の寒村で漁師として働く孤独なデンマーク人男性との出会いでした。「必死に生きる女性」と「孤独に耐えられない男性」が二人を結婚へと導いたのです。国際結婚を実現した漁村に嫁いだ女性は、同じく貧困に苦しんでいた自分の姪を呼び寄せ、同じ村の男性と結婚させます。そして、さらにタイの新聞に「花嫁募集」の広告を掲載し、小さな村にタイ人女性とデンマーク人男性の夫婦を増やしていったのです。生きるためにタイからデンマークへ嫁いだ女性たちの、異文化結婚の波乱の人生を見つめます。 アフガニスタンの苛酷な戦場と兵士の苦悩を記録したドキュメンタリー映画「アルマジロ」でカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞したデンマークの名匠ヤヌス・メッツ監督が10年間取材した渾身の作品。
監督:ヤヌス・メッツ、シーネ・プラムベック
<作品の見どころ・社会問題提起>
◆「生きるため」に結婚移住を決断し、タイからデンマークへと嫁ぐ花嫁たち・国際結婚の課題◆
タイには、日本以上に助け合いの精神が浸透しているといわれています。仏教の功徳のひとつとされ、豊かな人は貧しい人を助けるべきという価値観があるのです。そのため、助けられる側には、日本人のような恥ずかしさや気後れがないという現実もあります。そうしたなかで、「生きるために嫁ぐ」という考え方もまた、日本人の常識に比べ、ハードルは低いのかもしれません。そして、タイでは家族や親戚の絆が太い分、配偶者やその家族が豊かであれば、その豊かさにあやかりたいという親戚一同の欲求も高まります。ひとりの女性の結婚から、花嫁募集の動きで、デンマークへ嫁ぐタイの女性が増えたのは、そうした価値観によるところも大きいでしょう。一方で、彼女たちは、外国へ移り住むことの国際結婚・異文化結婚の困難にも直面します。海外移住し、言語も価値観も違う外国人の男性と人生をともに過ごすことの難しさは、当然ながら人生を一変させ、想像を超える苦難をもたらすのです。未婚の彼女たちにとって、結婚とは何なのか。愛とは何なのか。本作は、国際結婚と結婚移住を選択し、自ら人生を切り開こうとする彼女たちの、「愛」を求める遠く長い旅の記録・家族との絆を描くドキュメンタリー映画です。
(映画賞/映画祭)
2018年 チューリッヒ映画祭 ゴールデンアイ賞・ベストインターナショナルドキュメンタリーを受賞
2018年 アメリカ人類学会映画・メディアフェスティバル 最優秀賞受賞
2019年 王立人類学映画祭 リチャード・ワーブナー映像民族誌賞受賞
2019年 ヴァージンメディアダブリン国際映画祭 アイルランド市民自由委員会映画賞受賞
2019年 ドックビル(Docville)国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀国際ドキュメンタリー部門審査員賞受賞
2020年 ブダペスト国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
以下の賞にもノミネートされました
2018年 DOC NYC グランド審査員賞にノミネート
2019年 王立人類研究映画祭 バジル・ライト映画賞ノミネート
2019年 ヨーテボリ国際映画祭 北欧大会ノミネート
2019年 デンマークドキュメンタリー映画賞
2019年 デンマーク映画批評家協会賞 ボディル賞ノミネート
予告編
登壇者紹介

宇多丸(ライムスター)
ラッパー/ラジオパーソナリティ
1969年東京都生まれ。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパーで、TBSラジオ(月~木)の22時から生放送されている、ワイド番組『アフター6ジャンクション2』を担当するラジオパーソナリティ。1989年、大学在学中にMummy-Dと出会い「ライムスター」を結成。日本ではまだヒップホップ/ラップが浸透していない中で、「日本語でラップをするための方法論」を模索、曲作りとライブ活動で試行錯誤を繰り返して、今日にいたる日本のヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。また2007年にTBSラジオで番組が始まると、ラジオパーソナリティとしてもブレイク。中でも愛ゆえ本音で語りおろす映画評は、現在も続く人気コーナーに。近作にライムスターアルバム『Open The Window』(2023)、単行本『森田芳光全映画』(2021)ほか。

落合 恵美子
京都産業大学 現代社会学部 現代社会学科 教授/京都大学名誉教授
専門は家族社会学、ジェンダー論。2000年代初頭からアジア社会の比較調査を続けてきた。子育てと高齢者ケアのしかた、ジェンダー分業、家事労働者の国際移動、国際結婚による女性の移動などが中心テーマ。関連の著書に、『21世紀アジア家族』(上野加代子と共編著、明石書店、2006年)、『アジア女性と親密性の労働』(赤枝香奈子と共編著、京都大学学術出版会、2012年)、『親密圏と公共圏の社会学―ケアの20世紀体制を超えて』 (有斐閣、2023年)など。アジアの内側からの視点を共有するため、アジアの研究者やライターによる関連著作を集めた『リーディングス アジアの家族と親密圏』(森本一彦・平井晶子と共編、全3巻、有斐閣)も刊行した。