
ア フリカの少年ブッダ
11月7日(SAT) / 15:25
【日本初公開作品】
原題:Buddha in Africa
2019年製作/マラウイ共和国/作品時間90分
※日本国内のみ視聴可能
マラウイなどアフリカの国々で孤児たちを支援する施設が根づきはじめています。中国語で中華思想をたたきこむ全寮制の学校です。貧しい農村部で、家族が養えない子どもたちを集めて中国名を与え、徹底した中国語教育を行っているのです。カリキュラムは、数学などの基礎学習に加え、仏教や少林拳など徹底して中国文化を修練させることを実践しています。指導では、アフリカ的な価値観は排除され、当然のように中国への同化が求められます。生徒たちは、学校側の思惑と自らのアイデンティティとの板挟みに悩みながらも成長していきます。
・本作で撮影対象となっている孤児院は「台湾」の慈善団体によるものですが、本作を特集「アフリカと中国」で配信させていただいている意図は、アフリカに同様の教育が広がり、こうした教育による人材育成によって、アフリカに進出する中国系企業を支えている背景があるからです。
・また撮影対象の孤児院では、指導者が中国文化による教育を行っており、「中国文化と仏教をアフリカに広めたい」と発言し、その優位性を語っています。また指導者は「中国はあと5年もすれば世界1位になる」と、台湾よりむしろ中華人民共和国としての立場から、中国が世界の中心的立場を担う趣旨の発言をされております。
・本作の舞台となっているマラウイでは、2007年に台湾と断交し、中華人民共和国と国交を結びました。現地では、子どもたちも一般の人々も、特に「台湾」「中国」の区別はなく、「中国」と認識することが一般的で、作品内の発言も、国としての違いを意識した描写はみられません。一方、中華人民共和国と台湾の攻防、そして中国企業の進出はマラウイ社会に大きな影響と混乱をもたらしてきました。
・また本作は、外国による教育と支援の課題についても鋭く問いかける作品です。宗教がからんだ慈善活動は、世界中で行われておりますが、施す側と施される側の立場の違いによって、見えるものが違ってきます。
・本作は、そうした様々な課題を浮き彫りにしながら、社会の矛盾について問題提起するものです。賛否両論や様々なご意見があるかとは存じますが、ぜひご視聴いただき、問題について考えていただければ幸いです。
監督:ニコール・シェーファー
◆中国に支配されつつあるアフリカの自問自答◆
「中国人は人間を食べるという噂があった」。そんな噂がまことしやかに広がることからも分かるように、アフリカの民衆にとっては、中国の進出が手放しで歓迎できるものではなさそうです。その理由は、中国人のアフリカでの振る舞いが、決してアフリカのためではなく、中国の利益のためだということが露骨に感じられるからではないでしょうか。貧しい子どもたちは、支援されなければ教育を受けられないことを理解していますが、一方で中華思想の教育を「強制されている」と感じており、自らのアイデンティティとの狭間で苦しみます。隔離教育のせいで、生まれ持った自国の言葉を話せず、親戚との会話でさえ十分できない苦悩。かといって中華思想に染まりきることもできず、深まっていく孤立感。自分は、何のために学ぶのか、何のために生きるのか。その問いは、中国に支配されつつあるアフリカの自問自答のようです。
予告編
登壇者紹介

長井優希乃
ラジオパーソナリティ
ヘナ・アーティスト
長井優希乃
ラジオパーソナリティ、ヘナ・アーティスト
現在J-WAVE 81.3FM "SUNNY VIBES"ナビゲーター。音楽フェスMC、トークショーなどに出演。これまで訪れた国は35カ国。大学院ではインド・デリーのヘナ・アーティストに関する文化人類学的研究をおこなう。自身もインドの家族と共にヘナアートを路上で描き、帰国後もヘナ・アーティストとして活動。2018年にJICA海外協力隊としてアフリカのマラウイ共和国に派遣。マラウイから帰国後は中学校社会科教員や執筆、ラジオなど分野を越えて、人々が多角的な視点から世界を捉える「きっかけ」をつくる活動を行なっている。
WEBコラム「バイブス人類学」(集英社新書プラス)
書籍『令和GALSの社会学』(主婦の友社)
寄稿『インド文化読本』(丸善出版)など

吉野華恵
東京大学先端科学技術研究センター 特任助教
吉野華恵
東京大学先端科学技術研究センター 特任助教
元・中学校・高等学校社会科教諭。2012年から2年間、青年海外協力隊員としてマラウイ共和国でコミュニティ開発に携わる。2016年に中高を退職し、University of Sussex(英国)および東京大学大学院で国際教育開発学を学ぶ。研究テーマはマラウイの市民性教育。